〘英語-custard apple(カスタードアップル) 中国語-釈迦頭、蕃茘枝 インドネシア語-sri kaya, seri kaya(スリカヤ)〙
スリカヤの名はどこから?
とにかくたくさんの名を持つフルーツである。そして、同じような品種が多くて、どこまでをカスタードアップルと呼んでいいのか分からない。もともとはバンレイシ科のAnnona reticulata=カスタードアップルで、日本語ではギュウシンリというらしい。でも、この「もともと」は、残念ながら食べたこともないし見たこともない。シンガポールでよく見かけたのは、釈迦頭と呼ばれる品種。残念ながら手元に写真がないのだが、確かに仏像の螺髪に似ていて笑ってしまう。
ちょっと前、沖縄産のアテモヤを見つけて買ってみた。アテモヤは「チェリモヤと釈迦頭の交配種」だそうで、釈迦頭よりはちょっと小ぶり。とろんと甘くておいしい。“カスタード”アップルと呼んでまったく差し支えないクリーミーな味わいだが、香りはリンゴより梨に似ていると思う。でも、いちばん風味が近いのは、子どものころ好きだったチェルシーヨーグルトスカッチ!どこか懐かしい味。
インドネシアでは、このフルーツのことをスリカヤ(srikaya, serikaya)と呼ぶのだそうだ。あ、思わず「この」と書いてしまったけれど、釈迦頭なのかアテモヤなのか、はたまた他の品種のどれなのかは不明(情報求む)。個人的には、小さめの柑橘をまとめて「みかん」と言っちゃうくらいの感覚・・・どうぞご容赦を。
じつはもうひとつ、インドネシア語でスリカヤと呼ばれるものを知っている。カヤジャムである。「シンガポールの朝食の定番」などとガイドブックに紹介されていたりする、ココナッツミルク、卵、砂糖、パンダンリーフを煮詰めたスプレッドだ。
カヤジャムのカヤ(kaya)がインドネシア語やマレーシア語で「お金持ち」とか「豊かな」という意味であることはだいぶあとで知った。主原料は卵で、セリカイヤというポルトガルの伝統菓子と共通点がある、どちらが先なのか?という話を、シンガポール・プラナカン協会のピーター・リーさんの講演で聞いて以来、セリカイヤが気になって気になって仕方ないのだが・・これはまた別の機会に。
「豊かな」という意味を持つkayaに、さらに畏敬や崇拝の対象に付けることばsriが頭についたスリカヤ。当時の人々がどれくらいこの味に驚き、珍重したのかは想像に難くない。果物のことをそう呼んでいたのか、それとも牛乳の替わりにココナッツミルクを代用したお菓子のおいしさがカヤだったのか?そこから転じてお金持ちもkayaと呼ばれるようになったとか?(まさか!)
だいぶ脱線してしまったが、食べものからあれこれ妄想することほど楽しいものはない!とつくづく思う。
参考:「東南アジア市場図鑑 植物篇」 吉田よし子、菊池裕子著
コメントを残す