〘中国語-香菜(シャンツァイ) 英語-coriander(コリアンダー) ポルトガル語-coentro(コエントロ) タイ語-ผักชี(パクチー) インドネシア語-ketumbar(クトゥンバル) ヒンディ語-धनिया(ダニヤ) ベトナム語-Rau mùi(ラウムイ)〙
今はパクチーと呼ばれるけれど
先日、京都のおいしいポルトガル料理やさんで「パクチーが嫌いな人はいますか?」とシェフに聞かれて、なんだか不思議な気持ちになった。パクチーというタイ語がすっかり定着してしまったが、もともとこのハーブは日本でなんと呼ばれていたのだろう?
私の場合、記憶にある限り「シャンツァイ」と呼んでいた。最初に食べたのは・・うーん、どこだ?おそらくは台湾あたり。だからシャンツァイ=香菜。とはいえ、和洋中以外は「エスニック」とひとくくりにされていた時代なので、トルコ料理やさんでもメキシコ料理やさんでもシャンツァイ、と言っていたような気がする(私だけかも)。一方、コリアンダーの種はカレーのスパイスとしてずいぶん前から知られていた。それなのに、いや、だからなのか、コリアンダーリーフという呼び名が日本で定着した時期はなかったように思う。
個人史はともかくとして、日本にはいつごろ入ってきてなんと呼ばれていたのか。ざっと調べたところでは、最初は10世紀に中国から。中薬学では芫荽とか胡荽と呼ばれるコリアンダーリーフは、「開胃消食」(食欲と消化を促す)作用や「解表透疹」(発疹をうながす)作用を持つと言われているので、薬としての効能に注目されたのかもしれない。日本の文献に最初に登場するのは「倭名類聚抄」のようだ。パクチーハウス東京のファウンダー、佐谷恭氏がブログでその記述について綴っていてなかなか興味深い。
現在、植物事典などで見かける和名は「コエンドロ」。大航海時代の長崎にポルトガルからcoentroが伝わり、薬園で育てられるようになったいきさつから「コエンドロ」となっていったらしい。この時代にも料理に使われることはあったのだろうか?
「パクチー」という響きもかわいいけれど、ポルトガル語の「コエントロ」もロマンに満ちている。今度はこの名で呼んで!と、思わず京都のシェフに伝えたくなってしまった。
参考:「中医臨床のための中薬学」 神戸中医学研究会編著
コメントを残す