2023-02-15

真珠とビーズをめぐる旅 02 真珠とインド更紗

真珠とビーズにまつわる1年生日記、第2回目は「なぜKOELで真珠なのか」の話。少し横道に逸れるが、KOELの活動と思いについてあれこれ振り返りつつ、真珠のことを考えていたのに、またまたインドにつながってしまった思考回路やご縁など。

by Takashima Keiko

■アジアのことばとごはん、そして真珠?

KOELは、アジアのどこかに住んだ経験のあるメンバーたちが、「ことば」や「ごはん」について何かしら思うこと、伝えたいことを集められたら、と思って作った遊び場のようなサイト。スタートは2018年、インドのカトリ&ターリーと和食器について考える食イベントが初の活動。日本のうつわでアジアをぐるりと一周!のつもりだったのだが、2020年、イベント開催が難しい時期に突入。最近はサイトの記事掲載以外は内輪での勉強会など表に出ない活動が中心になっている。ちょっとずつ軸足を変えながらも、真ん中にあるのはいつも「アジア」だった。

なお、KOELが考える「アジア」はざっくりすぎて、どこからどこまでかは示しにくいのだけれど、それはそれでよし、と思っている。それぞれのアジアを思い浮かべていただければ。ちなみに個人的なイメージでいえば中心はやはり東南アジア。プラス、東南アジアに影響を与えた周りの国々、特に南アジア。という感じ。

さて、そんなわけなので、あるきっかけで真珠のことを考えるようになったとき、アジアという軸にそぐわない気がして、KOELとは別のプロジェクトとして取り組もうと思っていた。ところが、頭の中も行動ルートもアジアになっているからなのか、それとも引き寄せられたのか、不思議なつながりがどんどん増えて、結局真珠はKOELの新たな活動の核になりそうな気配。縁とはつくづく不思議なものである。

■真珠との再会

ちょっと個人的な話になるけれど、真珠との「再会」について。私の父は真珠に関わる仕事をしていたので、真珠は小さいころから身近なものだった。それだけに逆に興味が持てなくて、せいぜい冠婚葬祭に身に着ける程度。とくにここ7〜8年はうつわ撮影の仕事が多く、指輪やブレスレットが当たって陶磁器を傷つけることのないよう気づかっていたら、ジュエリー全般と縁遠くなってしまった。

けれども、父が残していった真珠を見て、なんだかほんのりときめいた。興味がないとはいえ、真珠をたいせつにしたい気持ちは根っこにあるので、どこかにどさっと渡してしまうのには抵抗があるし。そして、よくよく見て思う。真珠ってなんてきれいなんだろう。海のような月のような輝き。この静かな存在感。もしかすると今まで真珠そのものをじっくり見たことってなかったかも。父が生業にしていた真珠はある意味私にとって恩人的存在。そうだ、真珠のことをもっと知ろう。そして、何らかの形で真珠に恩返しをしよう。

pearl

■インドで真珠が採れるんだ!

そんなある日のこと。自転車に乗りながら真珠のことを考えていた。真珠といえば日本、そしてフォーマルなイメージが強いけれど、他のアジアの国の人たちはどうなんだろう?シンガポールでの風景を思い出そうとするのだが、そもそも真珠に興味がなかった私、みごとに覚えていない。
この日自転車で向かった先は、インドのブロックプリント展開催中のツォモリリ文庫。インドの布が大好きな私にとってたまらない展示。なのに、なんと真珠が目に入ってしまう。「真珠、扱ってるんですね。インドの人って真珠は好きなんでしょうか?」「採れますからね、真珠。これもアンダマン産ですよ」

びっくり!インドで真珠がとれるんだ。そう思った私、今考えると本当に無知だったと思う。じつはカレーと同じくらい真珠はインドと関わりが深いことを後日知ることになる。

■更紗と真珠とKOELがつながった日

さて、この日手に入れたインドの布「アジュラック」のことをちょっとだけ。
インドのブロックプリント(木版捺染)は片側だけ染めるものが多いけれど、アジュラックは両面捺染。以前CALICOの小林史恵さんにうかがったところによると、アジュラックはもともと牧畜民の男性が身に着けるもので、「夜明け前に仕事にでかける彼らが裏表を間違わないように」両面を染めるようになったとか。おしゃれだなあ!
アジュラクのルーツははっきりと分かっているわけではないが、インダス文明の染織物にはその片鱗が見られ、一説によると有名な神官王の像が身に着けているのはアジュラックだとも。なるほど、あの模様は確かにそう見えるかも。

Ajrakh
カッチ地方のアジュラックプールにあるスフィヤンさんのアジュラックプリント。手前はCALICO、奥はツォモリリ文庫で購入。

あれこれ検索すると、すてきな画像が次々に出てくる。あ、これも好き!インドではなく、パキスタンのアジュラックのようだ。そういえば、インドでアジュラック染の仕事をしている人たちのほとんどがルーツはパキスタンと聞く。小林史恵さんのご著書「CALICOのインド手仕事布案内」によると、カッチ王国の時代にパキスタン西部のシンドゥ地方から、他の職人集団とともに招かれたという。さて、検索でみつけたカラチのデザイナーはNoorjehan Bilgramiさんという方。さらにこの方の検索を続けて驚く。ええっ、KOEL?

なんと、たまたま検索でみつけたテキスタイルデザイナーの工房名が「KOEL」だったのだ。これはもう導かれているとしか言いようがない(そもそもKOELは鳥の名なので、そういうお店があっても全然おかしくないのだけれど)。KOEL cafeという素敵なカフェも併設されている。このカラチのお店に、いつか行きたい。そして、インドのカッチにも。

じつはカッチがあるグジャラート州は真珠やビーズとも大いに関係がある土地である。このあたりは後日、またゆっくりと。

参考: 「CALICOのインド手仕事布案内」小林史恵(小学館)、「手仕事を復興することーインド西部地震被災地の布工芸生産者ー」金谷美和

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