2019-10-30

チャ

tea
キャメロンハイランド(マレーシア)の茶の葉。

〘シンガポール-Teh(テ)、Tea(ティー) マレーシア語-Teh(テ) インドネシア語-Teh(テ) 英語-Tea(ティー) 中国語-茶(チャ/chá) ヒンディ語-चाय(チャーエ/chāy) タミル語-தேநீர்டி(テーニル/Tēnīr)  タイ語- ベトナム語-  〙

OやCの謎

by Takashima Keiko

おそらく90年代初めのころだと思う。台湾茶の取材でお会いした松山猛さんに、茶の「テ」文化圏と「チャ」文化圏のことを教えてもらった。このときの興奮は今でも忘れられない。食材のことばの背景を初めて意識したときかもしれない。

「テ」のルーツは福建、「チャ」は広東。つまり、両方とも中国語由来である。茶の伝わり方によって、「テ」文化圏か「チャ」文化圏かの違いが出てくるのだという。英語のティーやフランス語のテ、日本語のチャ、インドのチャイなどを思い浮かべてふむふむと納得したものだった。

十数年後。ふとしたきっかけで、タミル語で茶はதேநீர்டி(テーニル)であることを知る。あれっ、同じインドでもヒンディー語は「チャ」、タミル語は「テ」系??

キャメロンハイランド、広大な茶畑(2011年)

マレーシアのキャメロン・ハイランドを旅したときのこと。シンガポールでもおなじみのゴープラム(南インドのヒンドゥー教寺院特有の塔門)をみつけてはしゃいでいたら、その周りの緑はすべてBOHティーの茶畑だった。今ではマレーシアを代表するお茶の産地となっているが、プランテーションの始まりはイギリスの植民地時代。スリランカよりはずっと遅く、BOHティーのスタートは1929年だそう。そこで働くのは主にタミル系の人々だ。

もしかすると、タミル語が「テ」系なのは、この時代にイギリスが作ったプランテーションと関係があるのだろうか。なにしろインドでは意外なことに、20世紀に入るまでお茶を飲む習慣は定着していなかったというのだから。

さて、本題。シンガポールでは茶のことを「ティー(Tea)」とも言うし、「テ(Teh)」とも言う。中国系でいちばん多いのが福建ルーツの人であり、マレー語も「テ」、インド系もタミル系の人が多いとなれば、「テ」で何の不都合もない・・・というのが理由かどうかは分からないが、ホーカーセンターやフードコート、コピティアムと呼ばれる昔ながらのカフェの表記はたいていTehだ(ふつうのカフェは日本と同じく英語のTea)。

Tehをオーダーすると、加糖練乳入りの紅茶が出てくる。バリエーションとして、そこにOやCを付けるところがおもしろい。たとえばテー・オー(Teh O)はミルクなしの砂糖入り、テー・シー(Teh C)は無糖練乳と砂糖入り、という具合。CはCarnation milk(東南アジアでよく使われる無糖練乳のブランド名)のC、Oは福建語で黒をオーと発音するため、と聞いたことがある。真偽のほどは不明だが、この話を聞いてからオーダーを間違えなくなった。さらに、マレー語でゼロや空を指すkosongを付けて、「ティー・オ・コソン」と言えば、ブラックティーのことになる。

茶の文化、古きも新しきもなかなかに奥が深い。

参考:「国際移動の歴史社会学」重松信司著      BOH Tea(ウェブサイト)

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