2020-07-23

<レポート> オンライン挿し花ワークショップ 

2020.6.21 開催

sashibana
リハーサルも含め、参加者の方々に送っていただいた写真の一部。楽しさがあふれ出るよう。

「食べる」と「愛でる」の間には

「ことばとうつわとアジアのごはん」のKOELが、なぜ突然「花」なのか?これはたぶん、今年の春のできごとと深い関係がある。

歩く=移動だと思っていたが、この春はさすがに「ちょっと近所を散歩」という気分に。そして、驚いた。こんなに美しい風景や木々の音や風の匂いを知らずに過ごしていたなんて!鳥がさえずり、きのうはなかった花がそこここに。すごい、東京ってこんなに自然豊かなところだったんだ。

さらにスーパーマーケットで花を買うことを覚えた。専門店のように種類が多いわけではないが、ご近所の花農家からやってくる花は野菜と同じくらい新鮮、そして安い。知らない花との出合いは珍しい野菜をみつけたときのときめきとそっくりだし、「しおれないように」の工夫は野菜も花も同じ。

食べるか愛でるか。そこにあえて線引きなどしなくてもよいのかもしれない、と思い始めた。

花をオンラインで取り寄せることも覚えた。これもなかなか楽しい。

ちょうどそのころ、HANAIKEの山根元美さんとZoomで再会。いけばな教室を主催している彼女だが、育休中の現在は今までとはまた少し違った花との付き合いが始まっているという。花を「いける」と「育てる」の違い、道具であるはさみについて、料理と花との相性、好きな花器を見せ合いながら妄想いけばな・・などなど、もう花トークが楽し過ぎて時間を忘れてしまう。

挿し花とオンラインは好相性

この楽しさをもっとたくさんの人とシェアしたくて、オンラインワークショップという形で実践。こんな時期なので、花器は家にあるもの、花はご近所で手に入るもの。もちろん摘み花も歓迎、という気軽な会。

直接会えないもどかしさはあるけれど、その分むしろ会話がはずむ。誰とも均等な距離だから「席が遠くて話せない」ということもない。考えてみたら、それぞれがそれぞれの場所で用意した花と花器を見せ合うなんて、それだけで貴重な機会じゃないだろうか。

なんといっても、山根さんの目線のやさしさがいい。はさみの入れ方次第で花の寿命が変わること、水替えのちょっとした工夫など、基礎知識はふんだんに伝授してくれるのだが、挿し花については、むしろ物足りないと思うほど口を挟まない。目をキラキラさせながらひたすら観察している。そして、どうしても手が動かなくなったときに初めて、その人に寄り沿うアドバイスを少しだけ。マジックのようなその一言で、参加者はまた手を動かし始める。

世界のどこに住んでいてもこうして一緒に手を動かせるのはなんだか新鮮。「お花を生けるのに硬水でも大丈夫ですか?」(ドイツからの参加者)という質問に全員が耳をそばだてる。どこにも行けない今だからこそ、かえって気になる各国の事情。自然に会話が始まり、ヨーロッパの窓辺の花や庭、花市場などの話に。

違和感をたいせつに!

花は、そのままでも美しいものだけれど、組み合わせがうまくいかなかったり、バランスがとれないというのはよくあること。そんなときにはどうすればよいのだろう? 「日々、その違和感を大切にしています」という山根さんの回答にちょっと感動する。なんてすてきなんだろう。

そういえば料理もそうだ。ちょっと味が決まらない、食材のバランスが悪い、というような違和感は、次に料理するときに必ず生かされてくる。花を挿す、生けるというのも、もしかしてそういうこと?

・・・と、どこまでも花よりだんごのKOEL、しかし、そんな共通点が今は特にうれしい。花というのは、おそらくそこに存在するだけで人を癒し、元気づける力を持っている。ふと、アジア各地で見かけた祈りと花の風景を思い出した。

バンコクの街角で。

そして花は、名前もなかなかに興味深い。店先に出ているときと咲いているときでは違う名前だったり、はたまた歴史の流れを変える名で呼ばれた花があったり。KOELの「ことばで遊ぶ」に、食材だけでなく花が加わる日も、そう遠くないかもしれない。

エリンジウム
花屋の店先に「エリンジウムの根に自生するのがエリンギ」という説明が。この花の名は忘れずにいられそう!

Text by Takashima Keiko

挿し花ワークショップ 2020.6.21 
講師:HANAIKE 山根元美 
会場:オンライン 
主催:KOEL ×HANAIKE
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